第7章 玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば…
高杉side---
この間、あいつにそっくりな奴を、
見かけた。
すれ違ったものの、あちらはこちらに気づいていないようだ。
しかも、男装していた。
なんのために?
だが、皮肉にも、それは彼女に、
とても似合っていた。
…とりあえず、お預けだァ。
すれ違った後は、
いつのまにか、いなくなっていた。
ま、またいつか近いうちに会うことになるだろう。
そんなことを考えながら、
自分の用事を済ませ、船へ戻ると、
鬼兵隊の入隊試験を受けに来た輩がいたそうな。
今まで通り、総督である自分が、
監督をすることになっている。
一体、どんな輩が受けに来たのか、と
興味津々で来てみれば、
なんとまぁ、こんな偶然があるのだろうか。
受験者は、その双葉らしき者と、一人の男。
お互いに目があって、
思わず、目を見開いた。
だが、彼女からは何の反応も、
返ってこなかった。
まぁ、いい。
どっちにしろ、この試合は、
彼女が勝つだろう。
結果は、決まっているようなもんだ。
…もし彼女が本物ならば。
高)…で?今から試験をするが、
何か言っておくこたァ、あるか?
そう言うと彼女は、何もない、と答える。
そして試験が始まると、オレはあいつから目を離せなかった。
なぜだか、分からないまただ、
彼女に、釘付けだった。
あいつの腕は、攘夷戦争の時代よりも
さらに上達していた。
もしかしたら、オレよりも上かもしれない。
ま、そんなこたァ、どうでもいい。
最も肝心なのは、あいつが本心でここに来たのか、そうではないのか。
ただ、それだけだ。
甦る、記憶。
確かあの時、オレはお前をこの道へ誘った。
だが、あの時お前の返した答えは、
No だった。
なのになぜ、今さら?
答えは、未だ分からないままだ。
たが、いづれお前は、ここに現れるだろうことは、予知していた。
心に飼っている獣が暴れだすのも、
時間の問題だろう。
そう踏んでいたが、
意外と持ったものだ。
双葉... オレはまだ、
お前に未練があるようだ。