第6章 来たるべき 時が来たりと いふ時に…
…やはり、先ほどすれ違った男は、
正真正銘、高杉晋助 だった。
傘を脱いで私を一瞥した彼は、
一瞬だけ眼を見開いて、
次の瞬間には、いつもの冷たい眼をしていた。
高)…で?今から試験をするが、
何か言っておくこたァ、あるか?
眼を離せば、心が折れそうな気がして、彼の瞳を睨み続ける。
そして、告げた。
貴)いえ、ございません。
喉をならして、笑う。
高)そうか、では始めろ。
オイ、お前、こいつの相手しろ。
こいつが勝てば、こいつが、
お前が勝てば、お前が、
鬼兵隊に入ることになる。
そういって連れてこられた男が、
私の前に来た。
どうやらこの男も、鬼兵隊入隊志望者らしい。
こんなことに命を懸けるのも馬鹿馬鹿しいが、総悟を救うためなら、
耐えて、勝つしか、道がない。
高)どうしたァ?早く始めろォ。
彼の言葉に意を決して、
置いてあった木刀を取って、
構える。
それに答えるように、
相手方も、構える。
彼の付添人が、試合開始の合図をする。
審)…始め!
木刀を手に、じりじりと相手を追い詰める。
すると、早速相手方が、攻撃を仕掛ける。
だが、運が良かった。
彼の一挙一動が、スローモーションでしか見えない。
これなら、勝てるかもしれない、
そして、
最後に相手方の腹に一本決めて、
私の勝利となった。
だが、それまでが泥沼試合だった。
キツくてキツくて、たまらない。
そんなさっきまでの心が
やっと晴れた気がする。
これで、総悟を救う一歩を、踏み出せた。