第6章 来たるべき 時が来たりと いふ時に…
深夜、丑三つ時を過ぎる頃、
独り夜道を歩いていると、
傘を被った男が独り、
私と通りすぎた。
ふと、懐かしい香りが鼻をくすぐる。
この香りは…!?
すぐさま後ろを振り返ったが、
もうそこには、誰もいなかった。
もしかして…
とにかく、鬼兵隊のアジトへ急ぐ。
しばらくすると、それっぽい船が
港に現れたのが見えた。
こちらも傘を被っているので、
近くに寄りやすい。
外で見張りをしている男に、
尋ねてみた。
貴)もし、そこのお方。
1つお尋ねしても、よろしいか?
男はビックリして、私を見上げる。
男)え?…えぇ…。な、なんでしょうか…?
なんだ、意外と弱そう。
貴)我は、鬼兵隊に入隊したく、
入隊試験を受けに来たものなのだが、
どなたかに取り次いでは下さらぬか?
すると男は、バツが悪そうな顔をする。
男)え、えぇ。おるにはおりますが。
あの…あなた様は?
貴)あぁ、私か?
我は、鈴城 玲、と申すもの。
挨拶が遅れて、申し訳なくなんだ。
すると男は、
暫しお待ちを、と言って、
船の中へ消えた。
完全にいなくなったのを確認して、
忍ばせておいたトランシーバーに向かって、合図を送る。
また、短い伝言も残しておいた。
戸締まりに 浮かぬ顔して 近寄れば
矢面立ちて 苦しき今よ
和歌とは、便利なものだ。