第8章 〈番外編〉ヒヨコをプロデュース
「鋭児郎くん鋭児郎くん!!」
調理室を出たあと、安藤に袖を引っ張られた。俺より身長が1回り小さい安藤は俺を見上げ、なぜか内緒話をするように喋る。
「あのね、洗い物はちゃんと出来たんだよ…!」
すっごく褒めてほしそうな感じで嬉しそうに語りかけてきた。安藤の左目がキラキラ輝いている。きっと隠れているであろう右目も同様だろう。
確かに全部綺麗で、割れたものも一つもなかった。
「おぅ!偉いじゃん!」
「きしし…!」
イタズラが成功した時の子供みたいな顔で喜んでいる。こんな顔みるのは初めてだ。
「ありがとう、鋭児郎くん!」
「ん!」
頭をがしがしと撫でてやると、超喜んだ。尻尾があったら多分、ちぎれんばかりに振ってんだろうな。
「安藤。やっぱお前、得意なこといっぱいあるよ。」
「えっ?ほんと!?」
「今日だって、クラスみんな集まるとは思わなかった……。でも、集まった!それであんなにみんな楽しそうで。お前は皆の心を優しくしちゃう凄いやつだよ!男気あるしな!」
「……!!あぅ…なんだか照れるなぁ。ありがとう……ございます。でも…全部全部……鋭児郎くんの、おかげだよ。……本当に、ありがとう。」
きゅん
……?
そう満面の笑みで言われて、少しだけ、ドキドキした。かわいい。今のは、犬みたいでかわいい!じゃなくて…女子として、かわいい……。
安藤のことがもっと知りたい。
この気持ちがなんなのか、わかった気がする。
少し、緑谷が羨ましくなった。