第49章 buzzっちゃったか
朝、寮を出る前見たテレビのエンタメコーナーで、今日のおもしろ記事として特集されていた。
『ヒーローも段々と親しみやすさが重要になってくるのかも知れませんね。』
なんて笑顔のコメンテーターが言っていたけれど、恥ずかしいとかいたたまれないとか不安とかで顔がすごく熱い。
「おー!安藤でて」
「かっ、かえっ、リモコン!貸して!」
「わ!」
「あっ、の……えと……恥ずか…しくて……」
赤い顔を下に向けながら話すと、みんなから「なんだそっかァ」「もうヨシヨシ〜!」なんて声が聞こえる。みんな笑っていたり、ニコニコと微笑ましそうにしている声だった。
良かったと思った。
昨日、心配してもらっちゃったから。
そんなに、気にしないで欲しいから。気を使わないで欲しかったから。
こういう時は鈍感な方が楽なことを何となく知ってる。
そしてその方が、みんなは心配しなくて済むことも。
なんだかあざとくなってしまったなと思っていると、後ろから透ちゃんがどしんとぶつかってきた。
「だいじょーぶ!安藤可愛いから!」
「うー……でも……」
「ほら、遅刻するよ!行こ?」
みんなに連れられて寮を出た。
通学していた時よりもずっと短くなった道をみんなと楽しく話しながら歩く。楽しい。
パシャ
「あっ、やべ」
「バカ音消せって」
そんな音が聞こえていきなり心臓が凍る。
音がした方を見ると、慌ててスマートフォンを閉まっている生徒の姿が見えた。
撮られた?
撮られたんだとしたら、どうして?
ブワッと汗が出てきて、一瞬だけ足が止まった。
この人たちはどうしてこんなことするんだろうとか、私のことをどう思ってるんだろうとか、すごく考えてしまって。
面白がってるのとかバカにしてるのだったら嫌だなとか考えると、すごく頭が疲れてしまう。
できるだけ考えないように。
できるだけ楽しいことに目を向けて。
「安藤?」
「ううん、えへへ…なんでもない!」
少しだけ小走りになってみんなに追いついた。