第1章 ある夏の日【跡部甘夢】
デート当日。
とてもじゃないけれどデート日和とはいえない天気。
「今日に限って雨なんて…。」
はぁ、と小さくため息をつく。
着ていこうと思っていたお気に入りのワンピース。
着ていって汚れてしまうのも忍びない。
と、悩んでいる間にも待ち合わせの時間が迫っていた。
「え、もう来ちゃうじゃない!」
汚れてしまうとか考えているような場合では無さそうだ。
用意したワンピースに袖を通し、くるりと回る。
ふわりと浮いた裾は上品さを物語っている。
あとは髪を結って…とドレッサーに向かうと
トントン、と部屋のドアをノックする音。
「お母さん!今それどころじゃないの!景吾が来ちゃう!」
ガチャ、とドアがゆっくりと開く。
「あーん?俺がどうしたって?」
ふふふ、と彼の後ろで笑っているのはお母様。
少し不機嫌な彼を部屋まで案内するなんて…。
私がどうなっても良いの…?