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【YOI男主】大切な人【男主&勇利】

第1章 波乱の幕開け?


いつもの調子で、他のメンバーよりひと足先に着替えを済ませた純に尋ねたヴィクトルだったが、
「結構。勇利は、僕が一緒におると楽しめへんみたいやから。どうぞ、皆さんで心ゆくまで」
「…2人共何かあったの?」
ヴィクトルの質問には答えず、口調は穏やかだが棘混じりの言葉を伏し目がちに返した純は、音を立ててロッカーの扉を閉めるとそのまま更衣室を出て行く。
純が去った更衣室のドアを暫く見つめた後で、ヴィクトルは何処かぶすくれた表情のままの勇利に小首を傾げていた。

バーで独りビールを煽りながら、純は酒混じりの溜め息を吐き出した。
「何や、えっらそうに。そら僕は所詮強化A止まりで、もう現役ですらないけど、『デコ』にも負けへん位勇利の事考えとるつもりや。それを…」
ネヴァ川の名を取ったピーテル原産である地ビールのホップの香りに鼻を擽られた純は、少しだけ冷静さを取り戻すと、ロシアでの自分の立ち位置や勇利に対してすべき事を普段よりも靄のかかった脳裏で反芻させる。
昨シーズンの全日本選手権で勇利と再会するまでは、こんな風にスケートを通じた付き合いが続くなど、考えてすらいなかった。
一緒に競技を続けていた頃ですら、今のような比較的密接したやり取りなど皆無だったからだ。
昔からヴィクトルしか見ていなかった勇利と、そんな勇利へのコンプレックスや諸々の理由から「スケートは学生まで」と早々に割り切っていた自分が、まさか今日のような口喧嘩をするまでになるとは。
「そこまでコミュニケーションが取れるようになった、て意味では、悪い事ばっかやないんかな…けど、あそこまであからさまに否定や拒絶されるのは、流石の僕もへこむわ…勇利のアホ…」
店員に2本目のビールを頼むと、純はもう一度息を吐いた。

店に着いても無言のままな勇利に替わって説明したギオルギーとユーリによって、事の次第を把握したヴィクトルから二、三窘められた勇利は、夕食で空腹を満たされたのもあって、次第に冷静になっていくと共に、純に対してぞんざいな物言いをしてしまったリンクでの自分を反省していた。
「俺からの依頼もあるけど、普通は勇利の為に単身ロシアに来るなんて中々出来ない事だよ?アイツの力を最初に求めたのは勇利だろ?」
「…判ってるよ」
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