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【YOI男主】大切な人【男主&勇利】

第1章 波乱の幕開け?


「…よう判ったわ。つまり、僕の力はいらんて事やな?」
「誰もそこまで言ってないだろ!?」
「同じ事や!もうええ、勝手にしぃ!」
暫しの口論の後、珍しく声を荒げながら純が勇利に背を向けると、大股にリンクを後にした。
「お、おいカツ丼。いいのかよ…?」
それまで遠巻きに勇利と純を見ていたユーリが、戸惑いがちに切り出すも、勇利は口元を引き結んだまま沈黙を貫いていた。

切欠は、些末な事である。
ヴィクトルが取材でリンクを離れている間、勇利は純と共に彼の作った今季のEXプロの確認をしていたのだが、その際あまりにも細かすぎる純の指摘や要求に次第に苛立ちを覚えた勇利が、「ヴィクトルじゃないのに偉そうな言い方しないで!」と、つい八つ当たり紛いの反発をしてしまったのである。
それは、幾ら振付師とはいえついこの間まで同じリンクの上で競技をしていた純への複雑な感情から来るものであり、また純も、振付師として選手に対する気遣いの足りなさや、「自分がロシアにいる間、少しでも勇利にプロについて直接伝えなければ」という焦りが、2人の間に亀裂を生じさせてしまったのだ。
起こるべくして起こったとも言える2人の諍いを、ヤコフとリリアは冷静に分析する。
「カツキにしてみれば、ヴィーチャではなく同い年で自分より格下の同期の言葉は煙たくなる事もあろう。まあ、ここでは中々日本語を話す機会もないから、上林への無意識な甘えもあるのだろうな」
「そして、彼も振付師として未熟だわ。自分のエゴを押し付けるような真似をしては、反発されるだけ」
結局、そのまま純はリンクに戻らずじまいで、勇利も彼にしては珍しく不機嫌な表情をさらけ出したまま、基礎練習を繰り返していた。

練習終了後、更衣室で勇利は純とすれ違ったが、あからさまに顔を背けたまま着替えをする純を見て、つい勇利も無視を決め込んでしまう。
珍しい2人の険悪なムードに、更衣室にいたユーリとギオルギーは何処か気まずさを覚えていたが、その時ヴィクトルが勢い良く扉を開けて入室して来た。
「勇利!取材長引いちゃって、練習に付き合えなかったね。その代わり、これから皆で夕食に行こうよ♪」
「ジジイの奢りならいいぜ」
「付き合わせて貰おうか」
「お前も来るだろう?」
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