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【YOI男主】大切な人【男主&勇利】

第2章 言葉よりも、雄弁に


動画の一件で渋面を隠せずにいる純に、しかし藤枝は「お前なりの答えを見つけたようだな」と満更でもない表情で告げてきた。
「お前は騙し討ちだって怒ってるかも知れねえが、アレは、お前らしさの出ていた良い演技だったぞ。実際、俺のトコにもお前宛にアイスショー出演の打診が来てる」
「え?」
「今のお前に必要なのは、実績以上に自信だ。怪我して逃げていた昔のお前とはもう違う。振付師以外の事も、帰国までにちゃんと考えとけよ」
「…」
ビデオ通話越しに純の表情を見ていた藤枝だったが、ふとわざとらしく咳払いを1つすると、「あんまりそんな顔するな」と純に呼びかけた。
藤枝の言葉の意図が判らずに小首を傾げていると、歳上の恋人は密やかな囁きと共に続けてくる。
「ただでさえ、今すぐお前を抱きたくてたまんねえのに。あの『エロス』の動画、相当キタからな」
「…どアホ!こっちは真っ昼間や!ロシアの滞在期間も未だ半分近く残っとるんやから、自重せぇ!」
照れ隠しに喚いた純だったが、スマホ越しでも舐め回すような藤枝の視線に困ったように頬を染めると、やがて吐息混じりにか細く返す。
「僕かて我慢してるんやから。その代わり、帰ったら…」
「うん?帰ったら何だ?」
「判っとるクセに。ほんま、イケズ…僕以外のネタで『自家発電』なんかしたら、許さへんから」
すっかり羞恥に染まりきった顔で力無く睨んでくる恋人に、藤枝は忍び笑いを漏らした。

いつの間にか投稿動画サイトには、画面を2分割して勇利と純両方の『エロス』が視聴可能な比較動画まで現れ、ユーリはその動画とコメント欄に目を通していた。
「競技なら断然勝生だけど、ショーなら上林も…か。ま、いつか有名になったサユリに俺の振付させるってのも悪くねぇかもな」
そう呟くユーリの元へ、ミラから「リリアが貴方を呼んでるわ。今すぐ部屋に来いって」と声を掛けられた。
「ババアが?何の用だよ」
「さあ、多分今度のアイスショーについてじゃない?ユーリは何を滑るの?」
「未だ新しいプロは決まってねぇから、アガペーかGPSのEXかな」

自分の独り言が近々現実になるとは露ほども思わず、ユーリは気怠げな足取りでリリアのいる部屋へと向かった。


─To「The End of Boyhood(『少年』の最期)」─
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