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スキナヒト

第3章 感謝祭


ウェインside

10年前。配達をしていて、たまたまつゆくさの里の雑貨屋まで行った。

そこの店主のヒナタとは年も近く、仲もよかった。
ヒナタがいうには、ヒナタの妹が来ている。

俺が想像してたのはヒナタより少し下というくらいのそんなイメージだった。

だけど、川面に映る自分を眺めている小さな少女、いや、幼女と言うべきか。
でも、ヒナタと同じ茶色の髪に、ヒナタと同じ色の目。
多分、この子がヒナタの妹なんだろう。

もう、なんて話しかけたのかは覚えてないけど。
俺が話しかけた時の眩しいほどの笑顔だけ、覚えている。

その笑顔がいまでも俺の支えで。
その一瞬で恋に落ちてしまった。

だけど、彼女との年の差を考えると身を引くべきだと思って。
それでリシェットと付き合ったんだけど、リシェットは気づいていた。

昨日、振られてしまった。
彼女が俺のことを好きなのも知っている。
俺も好きだ。だけど、18年と言う時は簡単には埋められない。

10年が経って。
彼女は茶色の髪を肩まで伸ばしていて、ああいうの、なんていうんだっけ。
あ、そう、ボブだね。

本当に、綺麗になった。
里の人たちは里一番の美人、だなんて言っている。

そんな彼女にどんどん惹かれていった。
彼女と話すたび、彼女に見られるたびに。
もっと見て欲しい。話して欲しい。
そう思ってしまっていた。

昨日、ほんとは言うつもりなんてなかった。
なのに、彼女を目の前にしたら勝手に口走ってしまって。

「好きだ…」

勇気のないこの臆病な俺の中途半端なこの気持ち。
せめて、今だけは許してください。

もうアラサーなのに、10代の女の子に惚れるなんてどうかしてるよな…。

フォードには呆れられたし、リシェットにはすっごい怒られたし。
ナナミはいいんじゃない?とか言ってたけど。

もし、俺がもう少し遅く生まれていたら。
彼女が早く生まれていたら。
違ったのだろうか?

そんなこと考えても、仕方ない、か。

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