第7章 暗躍
迅「明希。お前、黒トリガー持ってるだろ」
悠一の言葉に僕は沈黙で返す。
迅「さっき本部で見回ってたら、明日の晩遠征部隊と三輪隊の合同部隊が、遊真の黒トリガーを奪いに来るのが見えた。俺の味方にお前はいる。勿論トリオン体でな。でも、使ってるトリガーが違うんだ」
僕「はぁ...。悠一のSEも大概厄介だよね」
僕は自嘲気味に笑った。
近いうちに話そうと思っていたけど、まさか悠一から話を振られるとは思わなかった。
持っている鞄の中から黒トリガーを出す。黒い柄に黄色のジグザグな線が入ったトリガー。
僕「悠一の言ってるトリガーはこれでしょ?」
迅「あぁ...」
僕「これの事はボスにも話したいから、本部に行ってボスを呼びに行こう」
迅「わかった」
そうして二人は、会話をすることもないまま本部へ向かった。
◇◇
本部の入口に着くと中からボスが出てきた。
林「お、2人ともどうした。顔が暗いぞ」
と言って僕達の頭をワシャワシャと撫で回す。
僕「大事な話があってボスを呼びに来ました。本部の空き部屋で話をさせて下さい」
僕と悠一の顔を見て話の重大さを感じたボスは、今は使われていない部屋に案内してくれた。
少し埃っぽいがこれくらいは我慢しないといけない。
林「で、大事な話ってなんだ?」
僕「このトリガーについてです」
そう言って、鞄からトリガーを出してボスに手渡した。ボスは驚いていたが、瞬時にこれが黒トリガーだと理解した。
林「この黒トリガーは誰だ」
僕「...風間進さんです」
2人は目を見開いて僕を見た。
僕はなんの前置きもなく、進さんが黒トリガーになった時の経緯を話し始める。
侵攻してきたトリオン兵の地響きで施設が崩れ中に取り残された時、一緒にいた幼稚園の子の泣き声で進さんが助けに来てくれた事。
そのあとすぐにモールモッドによってトリオン体を破壊され、進さんが生身になった事。そして、僕の目の前で黒トリガーになった事。
今でも鮮明に覚えている当時の記憶を、一つ一つ丁寧に話した。
話し終わると、林藤さんの肩が震えていた。林藤さんのそんな姿を見るのは初めてだった。
僕「...黙っていてすみません」
林「いや...気にするな。...あの時話さなかったのは...間違っていない」
僕「...」
その場に長い沈黙が流れた。