第19章 好意
*城戸視点
私達からの説教から開放された迅と太刀川。長らく正座していた為か、2人共足を投げ出して倒れ込んでいる。
明希が心配しながらも、好奇心に負けたようでツンツンとつついてる。つつくと「グアッ」やら「ウギャッ」やら呻き声が聞こえて来る。
太「藤咲...お前...」
迅「明希...?」
藤「ごめんww面白くってww」
「「後で覚えとけ...」」
2人にそう言われてつつくのは止めたが笑いは治まらない。徐々に落ち着いて来ると、2人の痺れも治まってきたようだ。
藤「ふぅ...2人共大丈夫?」
太「聞くのが遅せぇよ」
迅「もっと早く心配して欲しかった」
2人から同時にチョップを喰らう。明希には避ける事は可能だったが自分が悪いと自覚していたのであろう、甘んじて受けていた。
明希が心配より好奇心が勝っただけだと悪戯っ子のような笑みで伝えると、2人の表情がふっと綻ぶ。
迅「あーもー可愛いから許す」
太「俺も〜。それに、俺を庇ってくれたしな。その礼も含めて許してやるよ」
藤「2人共ありがとう♪︎」
何だかんだ言って明希に甘い2人は、それぞれ明希の頭を撫でたりハグしたりしている。
明希はそれらをとても嬉しそうな顔で受け入れている。
明希は基本的に、人に甘えたりはしない。だが、ある特定の相手には甘えるようになる。実は甘えたがりで素直な可愛らしい一面を持っている明希は、普段は礼儀正しく大人っぽい雰囲気を装っているが、頑張り過ぎてしまった時・その場に特定の人しかいない時は素に戻る。今の場合は後者だ。
忍「城戸さん、珍しく口元が緩んでますよ」
3人の微笑ましい光景を眺めていると、忍田本部長に声を掛けられた。
城「...大きくなっても、私にとって彼等は子供だ。守るべき、大切な子共達だ。迅も明希も太刀川も、勿論君もだ。忍田君」
忍「私も、ですか」
城「あぁ。林藤や唐沢君達もそうだ。私達"3人"からすれば、な」
3人の所で忍田君が反応を示す。誰の事かは言わずともわかっただろう。
再び明希達の方を見ると、仲良く話していた。ふと、明希と目が合う。腕を広げると、意図を察したようで腕の中にすっぽり収まった。
藤「城戸さんからなんて珍しいですね!」
城「嫌か?」
藤「そんなわけ無いです!寧ろ凄く嬉しいです!」
明希の笑顔につられ、自分の頬が僅かに緩んだのを感じた。