第9章 伝えたい想い
島田を自室に帰し、再びひとりになった部屋で手紙の封を開いた。
中には二通の手紙が入っていて、一通はゆきの旦那からのものだった。
どうやら、彼女の遺品を整理していた旦那がこの手紙を見つけて、送ってくれたらしい。
人の好い旦那に感謝をしつつ。
一年越しの、ゆきからの手紙を開いた。
それは今まで京で受け取っていた手紙と全く変わらず、季節の挨拶にはじまり、体調への気遣いなどが書かれていて。
あまりの普段通りさに、思わず苦笑がこぼれた。
「…ったく、お前は本当に…」
人の心配をしている場合じゃなかったろうに。
本当にどこまでいっても、あいつはあいつでしかないようだ。
読み終えて、そっと手紙をたたむと、手紙の裏にもなにやら文字がみえて。
「……!!」
『――貴方に逢えたこと、
それが何よりの、幸せでした。
貴方を見送った桜の下で、先に待っています…』
目立たぬように小さく書かれたその文に、思わず目頭が熱くなる。
ゆきがいなければ、俺はこんな恋情を知ることはなかった。
胸が張り裂けそうなほど、苦しい想いをすることもなかった。
―これほどまでに、
人を愛しいと、想うこともなかった。
「…あぁ、俺も幸せだよ…お前に逢えたおかげで、今の俺がある…」
今は亡き幼馴染へ、胸を張って答えて。
ゆきからの手紙を胸に、俺は最後の戦いへと赴いた。