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【薄桜鬼】桜花恋語

第9章 伝えたい想い




―明治二年、五月十一日。






弁天台場へと向かう途中の一本木関門で、





激しい攻防戦の中




青空に、乾いた銃声が響いた。






次いで、ゆっくりと傾く己の体に、自分が撃たれたのだと、気付く。





「土方さん!!」

「副長!!」

「しっかりしてください!!」

「嫌だ、土方さん…っ!!」




周りから、たくさんの声が聞こえて。




―大丈夫だ、心配するな。



そう言いたいのに、言葉がうまくでてこない。





―俺はいつだって、新選組と共に在る。




だから、大の男がそんなに泣いてくれるな。




そう思わず、苦笑がこぼれた。












―なぁ、勝ちゃん。今なら、胸を張って言える。




あんたと一緒に歩んだ道は、最高だったよ。















次第に暗くなっていく視界に、満開の桜の木が映った。




その満開の桜の木に、ひだまりのように笑う、ゆきの笑顔が重なって見えて。





自然と顔が、ほころんだ。








『おかえりなさい、歳さん。…おつかれさま』







桜を背に微笑むゆきの声は、どこまでも優しくて。





なんて、都合のいい幻覚だろうかと思う。



けれど、幻聴でも、幻影でもなんでもいい。



どうしても、お前に伝えたいことがある。




―ようやく、胸を張って言えるから。お前に、聞いて欲しい。







このひとことの為に、これまで駆けてきたんじゃないかと錯覚するほどに。






昔も今も、…これから先も。










この想いが、俺をかりたてる。




























『…ゆき……お前を…ーーーー』
































…桜花恋語 完。

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