第3章 限りある者
「モーゼス!」
近くで倒れている者が必死に叫んだが、その者も起き上がれる気力はなく、悔しそうにこちらを睨んでいた。
私の下にいるのはモーゼスというらしい。
何とか逃げ出そうと足掻くがそう簡単にはさせない。
「っ…お前はディーヴァか?」
モーゼスは苦しみながらも私に問いかけた。
「いや…それにしてはシュヴァリエが少ないな…。それに…まだ目覚めていないはず。サヤか?」
自問自答を繰り返し、私の返答を待っているのだろう。
答えとしてはどちらも違う。
しかし2人を知っている者に遭遇したことはこちらには好都合だった。
「2人はどこ?」
少々横暴であるが、質問を質問で返す。
直接的には答えていないが、答えにはなっているだろう。
「サヤでもない…のか!?じゃあ…お前は誰だ?」
自分の疑問をお互いにぶつけるだけでは拉致が開かない。
私はモーゼスの喉元に刃を当て、質問に答えろと示した。
「誰が答えるものか」
「死にたいの?」
「死は覚悟している」
「そう」
この少年が生きて来た世界はどれだけ残酷なのだろうか。
この子だけではない。
今、周りにいるマントを羽織る少年少女たちは最初から死を見据えた目をしていた。
しかし、それとこれとは別である。
持っている武器を振り上げモーゼスに定めた。