第3章 限りある者
「待ってくれ!!」
振り下ろそうと決意した刹那、戦いの最中も隠れていた少年が声をあげた。
「ギー、出てくるな!!」
覚悟したように出てきた少年は絶望に満ちた目をしていた。
「…我々はサヤが日本の沖縄に、ディーヴァがベトナムにいるとの情報を得ている。すまないが、モーゼスを解放してほしい」
モーゼスの意思に逆らうように私の欲しい情報を提供してくれたギー。
私は彼の言葉に応えるようにモーゼスから離れた。
元より殺すつもりはなかったが、殺すと思われていたのが吉を招いた。
「そう。ありがとう。私はナリファイ、彼はレイム。私たちもサヤとディーヴァを捜している者よ」
なるべく自分の素性を隠して告げた。
今、全てを話してしまうと、隠していた意味もなくなってしまうから。
「それなら、協力してくれないか?僕等は限りある者シフ。」
「おい!!ギーやめろ!」
仲間の引き止めにも耳を傾けずギーは言葉を紡ぐ。
「僕等は人工的に作られた。寿命も設定され、生き延びる手段を探していた。それが血だった。サヤかディーヴァ…双子のどちらかの血が我々の汚れた血を浄化することが可能だと知った。もし、君たちも同じような状況なら協力しないか!?君たちには強さがある。僕等には数と情報を得る術がある。いい条件だと思うんだけど…!」
ギーは双子と言った。
恐らく他の者もそう思っているのだろう。
2人を狙うのは筋違いだと思うが、彼等の意志はわかった。
状況もなんとなく理解ができた。
しかし…。
「協力はできない。あなたたちの気持ちは伝わったけれど…ごめんなさい」
私は誰にも協力することができない。
私の血が一番けがれているから。
「そうか…」
ギーは残念そうに俯いた。
「本当にごめんなさい。あなたたちがいつか武器を捨てて笑顔で過ごせる日を祈ってる。また、会いましょう」
静かに微笑みを彼等に浮かべて、背を向けた。
その足で私とレイは一緒に日本の沖縄という場所を目指した。