第14章 シュヴァリエ
「……ナ…ル…」
ふいにレイが私の名を呼ぶ。
銃弾は肺も貫通しているのか、わずかにヒューヒューと風の音が聞こえる。
「!?レイ!」
「お…れは…もう…い…らな…い…の…か?」
レイは途切れ途切れに言葉を紡いでいく。
「そっ…そんな事ない!レイはいるのよ!!私にはレイが必要なの!あなたがいなきゃ、私は…」
そこまで私が声に出すと、レイは嬉しそうに笑った。
「そっか…だっ…たら、…もっと…いき…たか…った…な…。ナルともっと…」
そこまで言って、レイは意識を手放した。
レイの体は徐々に熱を失くしていく。
「助けたければ血を飲ませればいい」
「っ…」
血を与えればレイは死ぬかもしれない。
でも、与えなければ、それこそ確実に…。
少しでも可能性があるならば…。
レイを死なせたくない。
ただの私の願いだった。
手を噛んで口内に血を含み、レイの唇からその液を侵入させる。
レイのためではなく、自分のために血飲ませた。
血は喉を流れ、レイはビチビチと…まるで打ち上げられた魚のように体を痙攣させた。
失敗だったのだろうか?
いつもと同じ結果になってしまうのだろうか?
彼はもう、私の隣にはいなくなるのだろうか?
私の心臓は壊れそうなほど動きを速めた。
一度完全に心臓が止まり、私が絶望に打ちひしがれたとき、再び目を開けたレイはこの世のものではない姿をしていた。