第12章 仕事
何があったのか、そんなことは考えればすぐに分かった。
その街は浮浪者が多いと聞く。
いわゆる、ここはスラム街だ。
駆けて行った少年はジョエルからお金を奪ったのだろう。
幸いにもここは路地裏が近くに多数存在する大通り。
人通りも多く、スリもしやすい。
路地裏に入れば、知り尽くしているものの方が有利になる。
よく考えられた方法だ。
お金とは先ほど稼いだものだろう。
だとしたら、そんなものはいらない。
あんな、汚らわしいお金なんて、いらない
しかし、あの少年の命を失わせたくなかった。
私は路地裏に入り、少年を探した。
周囲は埃と食べ物や死体が腐敗した臭いが漂っている。
思った以上にひどい有様で、胃が収縮するのを感じるほどだった。
私の後をついてくるジョエルは眉間に深いシワを寄せている。
入り組んだ道をただ闇雲に歩いていると、見つけてしまった。
小さく体を丸めて、ジョエルから盗んだお金を数えている少年。
彼は私たちに気づき、ハッとこちらに目を向けた。
カチャリと鳴る金属音がジョエルの手にある拳銃から聞こえたのだと、私は理解してしまった。
少年には死しかない。
そう思うと身体が先に動いた。
なぜだかわからない。
少年を守るように手を広げ、ジョエルを睨んでいた。
「退きなさい」
冷たく心まで凍った表情で発せられた言葉は恐怖でしかなかった。
「撃たないで!」
逃げたい…。
でも…。
「まあ、いいだろう」
私は葛藤に打ち勝った。
これで良かったんだ。
…と思い、気を抜いたのが甘かった。
バン!!!!
聴きたくなかった大きな音。
流れる血は地面を赤く染めていった。