第6章 歌姫
そこではがらんとした正方形の部屋になっており、光が届かないために視野が狭い。
部屋の中心に私たちが追ってきた目的のコンテナが床に固定されている。
すぐにもディーヴァに会いたい。
しかし、コンテナの前に立っている将校服を身につけた黒人の男によって、その思いは阻まれる。
私たちは部屋の入り口から顔を覗かせ、様子を伺うことにした。
コンテナの扉がギィ…と音を立て開く。
そこから出てきたのは鮮血で赤く染めたドレス姿の少女。
彼女こそがディーヴァだ。
開いた扉の隙間から見えている気力のない手は真っ赤な海に浸っている。
ディーヴァは檻から出た獣のような目つきで男に飛びかかった。
男はただの人間では避けられない速さだったディーヴァの攻撃をギリギリではあったが躱した。
しかし、彼はディーヴァに勝てない。
理由は単純明快である。
ディーヴァの方が強いから。
ディーヴァは男の隙をつき、本気で殺そうと襲いかかる。
男の生死など、どうでもいい。
むしろ、私にとっても邪魔な存在である。
ただディーヴァが人を殺めるところをどうしても見たくなかった。
私の体は考えるより先に飛び出していた。
ディーヴァと男の間に入って彼女の動きを止める。
そして、私は彼女を抱きしめた。