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隣の君

第2章 天国から地獄へ


そんなそっけない挨拶を交わしてから

お隣さんと顔を合わせることもなく

3日が過ぎた朝…


出勤準備を済ませ

右手には鞄を

左手にゴミ袋を抱えて


玄関を出る…



独り暮らしなわりに

自炊をするせいで生ゴミが多く

匂いが気になるゴミ袋と

一秒でも早くさよならしたくて


早足でエレベーターの前まで行くと

私より先にエレベーターを

待っていたのであろう

お隣さんと3日ぶりに遭遇する…



朝からばっちり

サングラスをしてるわりに

寝癖でボサボサの髪で

眠たそうに

エレベーターの前に立つお隣さんに



「おはよう…ございます……」



そう遠慮気味に挨拶をすると…




ちらりとこっちを見て

解るか解らないかぐらい小さく

会釈をして


やっぱり笑顔を見せることもなく

ふいっと前を向いてしまう…



やっぱり愛想のかけらも

ないやつだ…!


なんて心の中で舌を出しながら



"チン"と短い音をたて開いた

エレベーターにお隣に続いて

乗り込もうとした瞬間



左手に持ったゴミ袋の存在を思いだし

踏み出した足がピタリと歩みを止める…



よく考えればエレベーターってやつは

密室なわけでは…



このかなりの悪臭を放つゴミ袋を手に

これに乗り込めば


愛想のかけらもないお隣さんに

どう思われることやら…(汗)




そんなことを考え

エレベーターの前で立ち尽くす私に

お隣さんは



「乗らんの…?」



そうめんどくさそうに

ポツリと呟く…



だから仕方なく



「あの…これ生ゴミで…だいぶ臭くて…

申し訳ないんでどうぞお先に…」



そう言って

下を向いた瞬間



"ふ…(笑)"


なんて小さな笑い声がして


私の左手からゴミ袋が

奪われる…



「あれ…あの…?」



なんて驚いて顔を上げると



私の左手にあったゴミ袋と一緒に

可笑しそうに口を緩めて笑うお隣さんが


唖然とする私を残し

エレベーターの扉の中に

消えていった…
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