第3章 君色(前編)~蒼世~【R15】
それ以来そのことは私の胸の内に隠し続けていた。バレないことは幸せだ。
バレていないからこそ今日も私は蒼世に笑顔でいられる。
今日は少し遠出をした。
食材の他に日用品を買い揃えていたらすっかり遅くなってしまった。
『まずい。急いで帰らなきゃ!』
夕暮れ時を早歩きで急いでいたら近くの路地裏から物音が聞こえた。気になって恐る恐る近づいてみる。
「おいガキッ!そいつをよこせっ!」
「いやです…。…これは父ちゃんに頼まれたもんなんだ…」
典型的なカツアゲだった。
『…うちの近所で問題を起こさないでくださいよ!』
…悪い癖だ。子どもを可哀想に思い、つい男の前に飛び出してしまった。
「なんだァこのアマ!」
『今のうちに逃げて!』
「そんなぁ!お姉さん残して逃げられないよ!」
子どもは半べそをかきながら私にしがみつく。
『駄目!早く逃げて!』
「正義感の強い姉ちゃんじゃねぇか。」
男に強引に腕をつかまれる。
「…へぇ…よく見たら上玉じゃねぇか。闇市に連れてったら高く売れるかもな。」