第4章 君色(中編)~蒼世~
蒼世ってばデリカシーがないんだから!あの鉄仮面!こう思ってみるも彼への怒りより絶望が大きかった。
知られたくない人に一番知られたくないことをしられてしまった。
走りに走って息が苦しい。流石にここまで蒼世は追ってこないだろうと思い後ろを振り向いた。
『っ!?』
「何故ここにいるのかとでも聞きたそうな顔だな。まずお前と俺とでは鍛え方が違う。」
後ろを振り向いたら息切れ一つしていない蒼世が立っていた。
腕を掴まれた。これではもう逃げることはできない。
「…まずは話を聞け。」
今は先程感じていた威圧感は感じられなかった。安心してしまったのか今になって涙が溢れてきた。
私はあの夜のことを彼に洗い浚い話した。ゆっくり、ゆっくりとだったが彼は急かすことなく頷いて話を聞いてくれた。
「俺がこのことを知ったのはほんの二週間前だ。」
『えっ!そうだったの?』
「朝乃、お前には話すべきではないと思ったが、お前には聞く権利がある。」
―――あの男はこの街のすぐ近くまで来ている。
喉がヒュッと鳴った。
「安心しろ、お前は俺が必ず守る。」
前から軽く抱きしめられた。蒼世がいつものようにフッと笑った。