第1章 STEP BY STEP
そんな簡単なことだったのに、泣いたり取り乱したりして、自分がものすごく恥ずかしい。でも・・・宗介さんはきっとそんな私でもいいって言ってくれるんだろうな。
少し俯き加減で考えに耽っていると、宗介さんがまた少し違う声のトーンで聞いてきた。
「なあ、ヒカリ・・・もう言いたいことはねえのか?」
顔を上げて宗介さんの方を見る。宗介さんの瞳はとても穏やかで優しくて、やっぱりこの人のことが大好きだなあって思った。
「じゃ、じゃあ・・・」
「ああ」
「・・・こ、この前みたいに・・・ぎゅっ、ってしてください・・・・・・」
・・・ああ、これじゃあ言いたいことじゃなくって、してほしいことだなあって思ったけれど、そう思った時には私はもう宗介さんの腕の中にいた。
「・・・ちゃんと言えるじゃねえか」
「・・・・・・」
私も腕を伸ばして宗介さんにぎゅっと抱きついた。
・・・汗くさくないかな、私。でも、それでもいい。今、すごくすごく宗介さんにくっつきたい。離れたくない。
「・・・・・・浴衣、着崩れちまわねえかな・・・・・・せっかく・・・よく似合ってるのに」
私にしか聞こえない小さな声だけど、宗介さんが言ってくれた。すごく嬉しくて、さらにぎゅっと宗介さんに近付いた。
「・・・平気。宗介さんにだったらぐちゃぐちゃにされたって構わないから・・・」
でも、私がそう言うと、なぜか宗介さんがピタリと固まってしまった。
「・・・・・・お前・・・あんまりそういうこと言うな」
「へ?なんでですか?」
「はぁ・・・・・・わかんねえんならいい」
小さくため息を吐く宗介さん。心からの気持ちを言ったのに・・・なんだか不機嫌にさせてしまったみたいだった。