第11章 嵐の文化祭 その4
頭にふと浮かんだ考えを言おうとした。だが、すぐにハルに遮られた。
「ヒカリを本当に笑顔にできるのは、お前だけだと思うから・・・」
ハルのまっすぐな瞳が俺を見つめてくる。
「だから・・・ヒカリを頼む、宗介」
「・・・・・・ああ、わかった」
俺もしっかりとハルの目を見つめると、そう答えた。
ハルと別れて、俺はヒカリの家に向かった。もうかなり遅い時間だから、間違いなく家にいるだろう。
あれから合間を見つけては何度か電話していたが、ヒカリは一度も出てくれなかった。
ヒカリの家の前まで来て、もう一度願うような気持ちで電話をかける。
「・・・・・・・・・はい」
何回かコールした後で、やっとヒカリが出てくれた。
「ヒカリ。俺だ・・・話がしてえ。今、お前んちの前にいるから出てきてくれねえか?」
「・・・・・・」
「お前は俺の顔なんて見たくもねえだろうけど・・・俺はお前と話がしてえ」
ヒカリは何も言わない。
・・・やっぱりダメか。仕方ない、もう少し時間を置いて・・・
俺が諦めかけた時だった。
「・・・・・・わかりました。今、行くから待ってて下さい」
小さな声でヒカリがそう言ってくれた。
「・・・親、もう帰ってるだろ。大丈夫だったか、出てきて」
「・・・・・・」
ヒカリは何も言わずに、ただこくりと頷いた。
数時間ぶりに会ったヒカリは、予想していた通り、目を真っ赤にして泣き腫らした顔をしていた。また、心が痛む。
「・・・行こう、ヒカリ」
「・・・・・・」
ヒカリの手を握る。また振り払われるかと思ったが、ヒカリは俺の手を拒まなかった。
小さなヒカリの手をもう一度しっかり握って、そのぬくもりを確かめると、俺は歩き出した。