第12章 嵐の文化祭 その5
宗介さんと手を繋いで少しの距離を歩くと、いつもの公園に着いた。
宗介さんが先にベンチに座る。いつもは宗介さんのすぐ隣、身体が触れ合う距離に座るのに、今はほんの少しだけ距離を空けて、私も腰を下ろした。
先週はここで久しぶりに宗介さんと話ができてすごく幸せだったのに・・・いつもここで過ごす時間はとても楽しいのに・・・今はなんでこんな気持ちでここに座っているんだろう。ぎゅっと胸が苦しくなる。
「お前も色々言いたいことあるかもしんねえけど・・・まず、俺の話を聞いてくれ」
「・・・・・・はい」
静かな公園に宗介さんの低い声が響く。
・・・本当は話なんて聞きたくない。宗介さんとあの女の人とのことなんて・・・
でも、これで宗介さんとおしまいになってしまうことの方がもっと嫌だ。
だから私は宗介さんに気付かれないように小さく深呼吸すると、覚悟を決めた。
宗介さんが言うには、宗介さんが高1の秋ぐらいに、あの人の方から声をかけられてつきあい始めたらしい。私が見たままの大人っぽい印象の通り、歳は宗介さんの一個上とのことだった。
「・・・多分、何もなければ俺もあいつに応じなかったと思う」
「・・・『何も』って?」
ここまで黙って話を聞いていたけど、急に宗介さんがどこか遠くを見つめるような瞳をして、気になった私は聞いてみた。
「・・・ちょうどあの時、肩壊したばっかで・・・リハビリもうまくいかないことが多くて・・・なんか・・・逃げ場、探してたのかもな」
「っ・・・・・・」
宗介さんが笑っているんだけど、泣きそうな顔になって、私は地方大会の日に宗介さんから聞いた話を思い出した。同時に呼吸が止まってしまうぐらいに胸が苦しくなった。
「・・・言い訳じみて聞こえるかもしんねえけど・・・あいつとは今のヒカリとの関係みたいな、そんな感じじゃなかった・・・」
「・・・えっと・・・どんな?」
私には宗介さんの言っていることが理解できない。つきあってた、って言うんだから、甘くてくすぐったくなるような、そんな関係しか私には想像できない。