第11章 嵐の文化祭 その4
「それじゃあ俺達はこれで」
「ああ、気を付けて帰れよ」
服も乾いたので、岩鳶の奴らと別れの挨拶を交わす。今まであまり話をしたことはなかったが、今日でこいつらのことを知ることができた。いい時間だったと思う。
「・・・さてと」
凛達には先に寮に帰ってもらった。ここからの時間の方がある意味、俺にとっては勝負だ。
携帯を取り出して、ヒカリに電話をかけようとした。
その時だった。
「・・・宗介」
そこには、もう帰ったと思ったハルがいた。
「・・・ハル?・・・どうした?なんか忘れ物か?」
今まで七瀬と呼んでいたのを、さっきハル呼びに変えた。それはこいつが俺を宗介と呼んできたからだが、まだその響きが少しだけむず痒い。
「いや・・・お前に話がある」
「・・・なんだよ」
あまり感情が顔に表れない奴だが、何か真剣な話があることは伝わってきた。
「ここに来る時・・・ヒカリが走って帰って行くのを見た・・・泣きながら。真琴達は多分気付いていない」
「・・・そうか」
「そうか、じゃないだろ。ヒカリがあんなに泣くなんて、お前と何かあったんだろ?」
「・・・」
まさか見られているとは思わなかった。俺は何も言うことができない。
「それに6月の時も・・・お前のせいでヒカリが泣いていた」
『6月の時』、それはヒカリに告白されて、俺が最初にあいつをフッた時のことを言ってるんだろう。
「・・・別に、ハルには関係ねえだろ」
・・・そうだ。確かにヒカリはハルの後輩だけど、これは俺とヒカリだけの問題だ。突き放すように、そう告げる。
「いや、関係ある!!あいつが泣いていると俺も・・・つらい・・・・・・!」
「・・・・・・」
「ヒカリに笑っていてほしいのに・・・俺じゃあいつを笑顔にできない・・・!」
ハルの迫力に押されて、俺は言葉が出てこなかった。
そして、さっき俺らがヒカリのことで騒いでいる時、ハルだけは何も言わずただじっと俺を見ていたことを、今になって思い出した。
「ハル・・・お前、もしかして・・・」