第11章 嵐の文化祭 その4
きちんとありのままを伝えたと思う。今は何もない、ヒカリが心配する必要はないって。
だけど、ヒカリが『あの人ともキスしたんですよね』なんて聞いてくるから、そこで激しく動揺した。なんでそんなこと聞くんだって。
・・・そこからの記憶が少し曖昧だ。それまでと同じように事実だけを言っていった気がするが、途中でヒカリが『もういい』とか言い出して・・・
それで俺も焦った。ヒカリが俺から離れて行っちまうんじゃないかと思って、それで・・・
「っ!・・・あっぶね・・・」
今度はフライパンごと床に落としてしまいそうになって、俺は思考を止めた。
・・・確かに凛の言う通り、少し時間を置いたほうがいいかもしれない。今すぐにでもヒカリのところに行きたいが、多分今の俺は冷静さをかなり失ってる。そして、それは多分ヒカリもそうだ。
時間置いて、もう一回、自分がヒカリに何を言っちまったのかちゃんと思い出して・・・
きちんと話をするのはそれからでも遅くないと思う。いや・・・そうあってほしい。
少し外が騒がしくなってきた気がする。客がたくさん入り始めたのかもしれない。
「宗介!たくさんオーダー入ったからな。頼むぜ」
「おう」
カーテンの隙間から顔を出して言う凛に、雑念を振り払ってそう答えた。