第10章 嵐の文化祭 その3
周りの人を気にしてか、控えめな言い方だけれど、予想通りの答えが宗介さんから返ってくる。しかも『たくさん』を強調して。
「・・・もういい。もういいです・・・もう聞きたくない・・・もう嫌です・・・」
頭の中が真っ白で、何を言っていいのかわからない。ただ、もうこれ以上宗介さんの話を聞きたくないことだけははっきりしていた。
「いや、おい、ヒカリ!」
「嫌です・・・離して・・・っ!・・・」
「っ・・・別にっ!・・・お前とだって、これからするんだし、昔のことなんてもういいだろ?!」
・・・なんで、なんで宗介さんはこんなこと言うんだろう。私の気持ちなんて、全然わかってない。
「・・・・・・」
「っ・・・なあ、ヒカリ・・・」
宗介さんの手が私の頭に向かって伸びてきた。いつも大好きな宗介さんの大きな手。優しく撫でてもらえると、それだけで幸せでずっとこうしててほしいと思った。でも・・・
「や、やだっ!」
「っ!!・・・」
初めて、私は宗介さんの手を払いのけた。
「そんなこと・・・私、そんなこと言ってるんじゃない・・・っ・・・宗介さんのバカ!!・・・・・・宗介さんなんて、だいっきらい!!!」
宗介さんに向かってそう叫ぶと、私はまた走りだした。膝が痛む。それでも私は走った。
宗介さんはもう私を追ってこなかった。