第9章 嵐の文化祭 その2
「ふふふ・・・宗介、キスしよ♪」
「ばっ!おい!やめろ・・・」
だが、調子に乗ったそいつは俺にぐっと顔を近付けてきた。
女にしては背の高いそいつが少し伸びをすれば、簡単に俺の唇に届く。
まずい、もうどうでもいいから、とりあえずこいつを押しのけて・・・
そう思った時、ドサッと何かが落ちる音が聞こえた。
「・・・ヒカリ?!」
そこにはもう行ってしまったと思っていたヒカリが呆然と立ち尽くしていた。
「あ、あはは・・・えっと・・・私、宗介さんに差し入れ持ってきたんですけど、さっき渡すの忘れちゃって・・・」
「・・・・・・」
「あら?あなた、さっきの中学生じゃない。あ、何?ひょっとして宗介の妹だった?」
俺はまだそいつに首に抱きつかれたままで、何も言うことができない。
「・・・でも、お取り込み中でしたね・・・・・・失礼します!!!」
落とした鞄を拾い上げると、ヒカリはバタバタと走り去ってしまった。
「ねえ、宗介、妹なんていたっけ?」
「っ・・・・・・ヒカリ!!」
やっと頭が正常に働き出して俺は急いでヒカリの後を追おうとした。だが、尚もそいつの手が俺の手を掴む。
「え?待って、もしかして今の子が宗介の彼女?!」
「・・・離せ」
「あはは!何?!ホントにそうなんだ!!宗介ああいう幼い子が好みだったんだ!」
「・・・・・・」
「そっかー。だったら私とヤってもヤっても満足できないはずだよねー」
「・・・・・・」
「でもホントあんな子供っぽい子でいいの?・・・ぷっ!あの子下手したら子供の作り方も・・・」
そこまで聞くと、俺はそいつの手を捻り上げて、身体ごと壁に押し付けた。怒りに任せてしまいそうになるのを必死に抑え、力は加減した。
「・・・あいつのこと悪く言ったら許さねえ」
「っ・・・・・・」
低い声でそう凄むと、そいつは青ざめた顔をして黙った。
「・・・・・・手荒なマネして悪かった。でも・・・俺は今あいつが大事だから・・・もうお前には二度と会わねえ」
「・・・・・・わかったわよ」
小さな声でそう言うと、そいつはこくんと頷いた。それを確認すると、俺はヒカリを追って走りだした。