第1章 STEP BY STEP
「それより・・・ヒカリ。お前、今日なんかおかしいぞ。どうした?」
やっぱり・・・というか、当然宗介さんにはお見通しだった。
「あんま話さねえし・・・なんか俺、怒らせるようなことしたか?」
「ち、違う!・・・違います、宗介さんは何も悪くないです・・・」
慌てて宗介さんの言葉を否定する。
「・・・ならどうした?」
ぽんと宗介さんの手が頭に置かれた。
・・・私の頭にスイッチがあって、宗介さんの手が触れると涙が出る仕組みにでもなってるんだろうか。
それぐらい簡単に、ただ宗介さんの手が触れただけでぼろぼろと涙が溢れてきた。
「・・・っ・・・ごめ・・・なさい・・・」
「・・・なんで謝るんだ?聞いててやるから、言ってみろ」
宗介さんの大きな手が頭を優しく撫でてくれる。ただそれだけで、もっと涙が溢れて止まらなくなる。
・・・なんでだろう、こんなに私、泣き虫じゃなかったのに。宗介さんを好きになってからの私、ものすごく泣き虫だ。
「・・・私・・・っく・・・宗介さんに『好き』って言ってもらえてすごく・・・ひっく・・・すごく嬉しかったのに・・・」
「・・・・・・」
宗介さんは私の頭を撫でながら、ただ黙って話を聞いてくれている。泣きながら、だけど私も話し続けた。
「そ、それが嬉しすぎて・・・頭の中・・・っく・・・宗介さんでいっぱいで・・・ドキドキしすぎて何話していいのかわかんなくって・・・っ」
「・・・・・・」
「・・・いつも通りに話さなきゃって焦るほど・・・今までどんな風だったか思い出せなくなっちゃって・・・っく・・・それに・・・」
「・・・それに?」
「ゆ、浴衣のこともあんまり言ってくれなかったし・・・やっぱり似合わなかったのかなって・・・だからこんなちんちくりんな私が宗介さんの隣にいても、釣り合わないかなとか・・・もう何か色々考えちゃってました!!!」
最後の方はなんだか喧嘩腰のような感じになってしまい、洗いざらい全部ぶちまけてしまった。
・・・いい加減宗介さんも呆れたと思う。その証拠に宗介さんの手は、私の頭から離れてしまった。