第6章 ジンベエザメの試練 みたび
「雨、やみそうにないですね」
ぬいぐるみを棚に戻すと、ヒカリは窓の方に行って、外を眺めたりしている。少し背伸びなんかして遠くの方を見たりして。
「・・・おい、ヒカリ。お前、ちょろちょろしてないで座っとけ」
ヒカリが動く度にTシャツの裾が揺れて、落ち着かない気持ちになる。俺は床に座ってあぐらをかくと、ヒカリも座るように促した。じっとしてた方が多分、いい。
「あ、はい。じゃあ、失礼します」
ヒカリはとことこと俺の方に寄ってくると、俺と触れ合うか触れ合わないか、というところにちょこんと正座した。
・・・なんっで、こいつはこんな近くに座るんだよ。座ったせいで裾が上に上がって、ヒカリの白い太ももが目に入って、慌ててまた視線を外した。
「あ・・・二段ベッドなんですよね。宗介さんは上と下、どっちですか?」
「・・・上だよ。ジャンケンで凛に負けてな」
ヒカリは俺の気持ちなんてまったく気付かないで、物珍しそうに二段ベッドを見上げている。
「へぇ〜、私一人っ子だから二段ベッド、憧れちゃうなあ。私は上がいいかなあ。なんか楽しそうだし、ふふ」
無邪気な顔をして笑ってるヒカリ。
・・・こいつ、ベッドの上に行ってみたいとか、言い出さないよな。そこまでガキじゃないか・・・・・・いや、こいつはガキだ。
「あー・・・やっぱ俺、外で待ってる」
「へ?なんでですか?」
「なんで、って・・・・・・別になんでもいいだろ。お前、そのまま適当にくつろいでろ」
少し身を乗り出すヒカリ。今まで気付かなかったが、俺の服だとやはり首まわりもがばがばで、少し胸元が見える。何もつけてない胸元が。
もうどうにもならなくって、俺はかなり不自然なぐらいにヒカリから顔を背けた。