第6章 ジンベエザメの試練 みたび
「・・・宗介さん」
「・・・・・・なんだよ」
「あの・・・私といっしょにいるのいやですか?」
「別に・・・」
「だって・・・さっきから私の方見てくれないですよね?・・・やっぱりお邪魔でしたか?」
・・・邪魔なわけない。なんでこいつはわからねえんだ。ただお前が無防備すぎてつらいだけなのに。
・・・何泣きそうな声出してんだよ。違うって目を見て言ってやりたいのに、どうしてもヒカリの方を見れない。
こいつがこんなガキじゃなかったら、ちゃんと全部わかってたらどんなによかっただろう。
「・・・じゃあ、私が外で待ってます」
「はぁ?!ばか、んな格好で外出んな」
なかなか答えない俺に痺れを切らしたのか、ヒカリはとんでもないことを言い出した。
「だってここ宗介さんの部屋だし、私が外にいます」
「ヒカリ、おい、待て」
腰を浮かしかけたヒカリを慌てて引きとめようとする。
その時、窓の向こうでピカっと光るものがあった。
「っきゃああああ!!!」
それが何かを考える間もなく、次の瞬間にはヒカリが悲鳴をあげて俺の首に抱きついてきていた。
「お、おい!ヒカリ?」
「っ・・・っっ・・・」
ガタガタと震えるヒカリと、少し遅れてやってきた窓を震わす音に、雷だと気付く。
「・・・ヒカリ。大丈夫か?」
「っ・・・っ・・・・・・や、やだ・・・どこにも行かないで・・・宗介さん・・・っ・・・」
ヒカリの震える声がすぐ耳元で聞こえる。
「・・・わかった。ここにいる」
俺の膝の上にヒカリがのっかって、首に抱きついている。この状況はかなりやばい・・・が、今はそんなことを言っている場合じゃない。こんなに怯えているヒカリを一人にするわけにはいかない。側にいてやらないといけない。覚悟を決めてそう、ヒカリに言ってやる。
「・・・お、お願い、宗介さん・・・ぎゅって、してください・・・っっ・・・」
「・・・ああ」
床に置かれたままだった手を、ヒカリの細い腰に回すと、強く自分の方に引き寄せた。