• テキストサイズ

いちご☆恋模様 PART2

第6章 ジンベエザメの試練 みたび


・・・このままここで乾くのを待つか。多分その方が絶対にいい。だけど、早くても30分はかかるだろう。その間、俺がずっと戻らなければ、ヒカリが心配して俺を探しに部屋を出る、ということも考えられなくはない。

・・・・・・その方がやばいか。

未だにものすごい勢いで危険信号が鳴り続けているが、俺は覚悟を決めて部屋に戻ることにした。





ドアの前でまたひとつ深呼吸をする。


「・・・あ、宗介さん。乾燥機、ありがとうございます。これ・・・私があげたやつですよね?」
「・・・おう」


部屋に入ると、ヒカリが小さなぬいぐるみを手にしていた。


「いやがられるかなーって思ったんだけど、飾ってくれてたんですね。嬉しいなあ」


ぬいぐるみを手に、ヒカリはにっこりと笑う。それは、ヒカリが家族でどこかの水族館に行った時に、俺への土産として買ってきてくれたものだった。どこがどう似てるのかはわからないが、俺に似てるからと言ってヒカリが選んでくれた、その小さなジンベエザメのぬいぐるみは、普段机の上の棚に飾ってあった。


「えっと・・・もしかしてこの子がしてるリボンって・・・私が前にあげたクッキーの袋の?」
「ああ、なんとなくそいつに似合いそうだったからな」


そのクッキーとは、以前俺達の関係を大きく動かすきっかけになったものだった。女々しいとは思ったが、そのリボンはなんとなくこれまで捨てることができずに、俺の机の引き出しに眠っていたのだった。


「やっぱり・・・あはは、可愛い」


リボンを結んだぬいぐるみを嬉しそうに見つめながら笑うヒカリ。

・・・・・・そんなのよりお前の方が可愛いんだよ。無防備な顔して笑ってんじゃねえよ、ばか。俺が今、どんなこと考えてるのかも知らないくせに。


・・・本当に腹が立つ。腹が立つけど、でもこいつの笑顔を見ると、全部許しちまう。どうでもよくなっちまう。


「あ・・・もう、シナモン入りのお菓子は作りませんから。安心してくださいね?」
「・・・おう、そうしてくれると助かる」


ふと思い出したようにヒカリが言う。あの時はかなりまいったが、あれがきっかけでヒカリは今、俺の隣で笑ってる。


「ふふふ、はいっ!」


ヒカリがまた笑って、さらに俺の鼓動が速くなった。
/ 254ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp