第1章 STEP BY STEP
「・・・そういや、お前、課題終わりそうか?」
「あ、数学だけちょっと・・・」
「数学か・・・」
宗介さんの問いにほぼ上の空で答える。
もしかして宗介さんの隣に、私みたいなのがいたら、すごく不釣り合いなんじゃないだろうか。身長差もものすごくあるし、こうやって手を繋いで歩いていても恋人同士どころか、兄妹とかに見られてるんじゃないだろうか。
・・・・・・でも、それでもいい!だって私が宗介さんの隣にいたいから。宗介さんのことが好きだから!
・・・好き・・・そっか、こんなかっこいい人が私の彼氏で・・・彼氏ということは宗介さんも私を好きで・・・うん、だってこの前『好き』って言ってもらったし、その後キスも・・・・・・
わーーーー!もうダメだ!爆発しそう!!
「ヒカリ、なんか食いたいもんねえの?」
「え、えーと・・・」
「お前、屋台全制覇すると思ってたんだけど」
「さ、さすがにそれは・・・」
「なんか家で食ってきたのか?」
「い、いえ・・・」
「チョコバナナ、とか好きそうだよな、お前。なんとなく」
「え・・・あ・・・うー・・・はい・・・」
・・・どうしようどうしよう。もう何を話していいのかわからない。頭の中が宗介さんでいっぱいすぎて、どうすることもできない。私、今までどんな風に宗介さんと話してたんだろう。初めてご飯二人で食べに行った時の方が、まだつき合ってなかったのに、すごくスムーズに楽しく話せてた気がする。なんでなんだろう、あの時よりもずっと二人の距離、縮まってるはずなのに、どうしてうまく話せないんだろう。
「・・・・・・っ!」
ふと足に痛みを感じて、こっそりと下を見た。浴衣に合わせて、下駄も新しくしたのがいけなかったのかもしれない。親指と人差し指の、ちょうど鼻緒が当たる部分が両足とも、擦れて赤くなってしまっていた。確認しないとわからないけど、結構ひどい靴擦れみたい。
・・・でも言えない。絆創膏とかも持ってきてないし、こんなの履いてきた私が悪いんだし、何よりもうすでに宗介さんに対してずっとそっけない態度だし・・・これ以上変なこと言って、嫌われたりしたくない・・・
でも、我慢しようとは思っても痛いものは痛い。私に合わせてだいぶゆっくり歩いてくれてるのに、それもついていくのがやっとで、すぐに宗介さんに気付かれてしまった。