第35章 ジンベエザメの試練 番外編
「っ・・・お、まえ、なあ!」
「だ、だって、今日まだしてなかったから・・・」
「当たり前だろ。お前の親いるんだぞ」
こんなとこヒカリの親に見られちまったら大変だ。慌てて辺りの様子を伺う。
・・・それに、親以前にキスなんてしたら俺が色々やばい。
「・・・・・・宗介さんはしたくないの?」
だけど、今度もまたヒカリは俺の理性をぶっこわす。パジャマを掴んでくる小さな手と潤んだ瞳。そして・・・暗くてもはっきりとわかる、真っ赤になった頬。
・・・・・・こんなの我慢できるはずがない。
「ほんっとお前・・・」
「・・・っん」
手を添えて上気した頬の熱を感じながら、何度も何度も口付ける。ただ軽く触れ合わせてるだけなのに止まらなくなる。いつまでもこの柔らかな唇を味わっていたくなる。
「んんんっ・・・・・・宗介、さん・・・」
だけど、いつまでもこうしてるわけにはいかない。最後に少しだけ長く口付けると理性を総動員して、俺はヒカリから身体を離した。
「・・・さ、もう部屋行け。な?」
「ん・・・おやすみ、なさい・・・」
「ああ、おやすみ」
軽く頭を撫でてやると、まだ少し物足りないような顔をしていたヒカリも納得したようだった。ヒカリが階段を上っていくのを確認してから、俺も親父さんのいる部屋へ向かおうとした。その時だった。階段の手すりのところからヒカリがこちらを覗き込むように顔を出した。
「宗介さんっ!また・・・・今度いっしょに寝ましょうね。だ、だいすきっ!お、おやすみなさい!」
早口でそう言うとヒカリは今度こそ階段を駆け上がって行ってしまった。パタンとヒカリの部屋のドアが閉じる音がする。
・・・・・・いや・・・いやいやいや・・・ありえねえ。
・・・これで親父さんと一緒に寝ろ、とか!!拷問だろ?!
風呂から出て時間が経ち冷えていた身体も、まるで熱湯を頭からかけられたように熱く火照っていくばかりだった。