第35章 ジンベエザメの試練 番外編
「宗介くん、何もないし暇でしょ?よかったらこれ見る?ヒカリの小さい時の写真」
ぼんやりしていると、いつの間にかヒカリの母親が戻ってきていて、その手には一冊のアルバムがあった。
「ふふ、ヒカリがいるとうるさいから・・・お風呂入ってるうちに」
「はい、ありがとうございます」
アルバムを受け取ると、パラパラとめくっていく。当然ながらそこに写っているのは幼い頃のヒカリなわけだが、笑ってる顔なんかに面影が感じられた。ヒカリ一人だったり、父親や母親とだったり、友達と映ってたり・・・色んな写真があったけど、そのどれを見てもヒカリがこれまでにたくさんの愛情を受けて育ったことがよくわかった。
それに・・・あいつ、大食いになったのは中学から、って言ってたけど多分昔から食うことは好きだったんだろう。5歳ぐらいのヒカリが、でっかいスイカにでっかい口を開けて嬉しそうにかぶりつこうとしてる写真があって、思わず声に出して笑ってしまった。
「・・・はっ」
「ん?どうかした?」
俺から少し離れたとこに座って、懐かしそうに写真を見てたお袋さんが顔を上げた。
「あ、いや。えっと・・・ヒカリ・・・さん。昔から小さかったんだなって思って」
・・・さすがに可愛いと思ったことは照れくさくて言えなかった。だけどこれもアルバムを見ていて感じたことだ。今もかなり小さいが、大勢の友達と写ってる写真の中でも、ヒカリは頭ひとつ分くらい小さく、すぐに見つけることができた。
「そうなのよねー。うちは私のとこもお父さんのとこもみんな背が低いから・・・」
そう言って、なぜかお袋さんはじっと黙ってしまった。
・・・まずい。変なこと言っちまった。慌てて取り成そうとする。
「す、すいません、別に・・・」
「でも・・・安心したわ」
「・・・は?」
機嫌を悪くさせちまったかと思ったお袋さんは、なぜか嬉しそうに俺を見ていた。
「だって、宗介くんがヒカリをお嫁にもらってくれたら、きっと孫はちょうどいい身長になるでしょ?ほら、宗介くんはとっても背が高いから」
「は?いや・・・あ・・・いえ、う・・・あ・・・は、い・・・」