第35章 ジンベエザメの試練 番外編
「ど、どうしよう・・・」
「・・・お前は大丈夫だったか?かかってないか?」
「は、はい。私は平気です・・・」
トレーを手にオロオロするヒカリ。とりあえずヒカリにはかからなかったみたいでよかったと思う。
「もう、ヒカリったら何やってるの!!早くタオル取ってきて!」
「は、はいっ!」
母親の声で我に返ったのか、ヒカリが足早にキッチンを出て行く。
「ごめんなさいね、宗介くん。あの子本当にそそっかしくて・・・」
「あ、いや、大丈夫です・・・」
大丈夫、と言ったが実際はあまり大丈夫ではない。首筋を伝ったコーラが服の中にまで入ってきてしまって、冷たい上にベタベタして気持ち悪い。
「宗介さん、タオルです!!」
「ああ、ありがとう・・・・・・」
ヒカリから受け取ったタオルでまずは頭と顔を拭いていく。コーラの臭いが染みこんじまってかなりベタベタするが、髪の方はなんとかなりそうだ。問題は服だ。ちょっとタオルで吸い取ったぐらいじゃどうにもならないぐらいに濡れちまってる。
「宗介くん、すぐに洗濯するからその服・・・あ!でもうちからコインランドリー遠いのよねえ。どうしようかしら?」
「あ、大丈夫です。俺、このまま帰りますから」
「ええぇ?!ダメですよ、風邪ひいちゃう・・・」
幸いコートは脱いであるから無事だし、この上から着ちまえば寮ぐらいまでだったらなんとかなるだろう。まあ、相当コーラ臭い奴だと周りには思われそうだが、それも少しの間だけだ。
「お母さん、もうお風呂沸いてるよね?とりあえず宗介くんはすぐお風呂に入って。風邪ひいたら大変だしね。その間に僕が服をコインランドリーまで持って行ってもいいんだけど・・・もし宗介くんさえよかったら、今日はうちに泊まっていきなさい」
「は?!い、いえ、そういうわけには・・・」
今までずっと黙って事態を見守っていたヒカリの父親がここに来て初めて口を開いた。が、その口から出た言葉はあまりに突拍子もないものだった。