第35章 ジンベエザメの試練 番外編
・・・つーかこれも今更なんだが、長島家の冷蔵庫でかいよな!ずーっと思っててつっこむの今更なんだけどよ!下手したらこの冷蔵庫うちの店の・・・
「宗介くん、寮に住んでるんでしょ?ご実家にはもう帰ってるの?」
「あ・・・はい、明日帰るつもりです」
「ご家族も喜ぶだろうね。忙しい時にわざわざ来てくれてありがとう、宗介くん」
「あ、いえ、こちらこそ・・・」
ヒカリの両親に話しかけられ、結局俺はヒカリを止めることができなかった。ちらちらと視線をやると、ヒカリがグラスに何かを注いでいるのが見えた。
・・・ああ、嫌な予感がする。
「お待たせしました!宗介さんの大好きなコーラです!」
・・・いやそうなんだけどよ、もう無理だってさっきから言ってんだろ!
・・・いや、言ってはいねえ。心の中で叫んでただけだ。
ヒカリがコーラの入ったグラスをトレーに載せて、俺に近付いてくる。
グラスの中でコーラが小さく揺れている。いつもは俺の喉を爽快に通り抜けていく液体が今はこんなにも憎らしくて仕方ない。
「あー・・・わりぃ、ヒカリ、俺もう・・・」
「へ?何か言いました?・・・っきゃあ!!」
何かに躓いたのか、足が滑ったのかヒカリの身体が少し前のめりになった。そして、それと同時にグラスが・・・コーラの並々注がれたグラスが俺の頭めがけて飛んでくる。
「あぶね・・・!・・・っ・・・・・・ぅ・・・あー・・・」
ヒカリを支えようとしたのか、飛んでくるグラスから逃げようとしたのか、恐らく両方共だと思う。とにかく俺は椅子からパッと立ち上がろうとした。だが・・・たらふくよりも更にたらふく食った苦しい腹を抱えては、そんなに素早く動けるはずもなく・・・俺は頭から思い切りコーラを被ることになってしまった。
「きゃああ!ご、ごめんなさい!大丈夫ですか、宗介さん!」
「・・・ああ・・・だいじょうぶ、だ・・・っっ・・・」
目を開けようとすると、つんとコーラが目に染みた。俺の身体の上を転がって下に落ちたからか、グラスが割れなかったのだけはよかったと思う。だけど、俺自身は・・・髪はもちろん着てる服もコーラまみれでほぼ全滅と言っていい。