第35章 ジンベエザメの試練 番外編
「わあ、宗介さん、いらっしゃい!・・・ってそうじゃなくて!ダメじゃない、お父さん!宗介さんにこんなに持たせたら・・・宗介さん、私持ちます!」
「いや、重いから俺が持ってく。これぐらい大丈夫だから・・・な?」
俺の方に歩み寄ってくると、ヒカリはダンボールに手をかけた。ヒカリの気持ちは嬉しいが、こんなに重いものを持たせるわけにはいかないし、そもそもヒカリの力じゃ持てないだろう。
「は、はい・・・じゃ、じゃあ早くうちの中入って下さい。ほら!お父さんが行かないと宗介さんが入れないでしょ?もう・・・」
「はいはい、わかったよ」
諭すように言うとヒカリは手を引っ込めたが、すぐに父親に向き直り、早くしろと急かす。そして、それに親父さんはにこにこ笑いながら答えてやっている。こいつ、家ではこんな風なんだな、なんて思ったらおかしくて、気付かれないようにこっそりと笑った。
「宗介くん、よく来てくれたわね!また会えて嬉しいわ!」
「お邪魔します。忙しいのに時間作ってくれてありがとうございます。あ、あと、うっかり土産持ってくるの忘れてしまって・・・すいません」
一階のリビングに通されると、すぐに奥のキッチンの方からヒカリの母親がパタパタと小走りでやって来た。挨拶と同時に土産を忘れてしまったことを詫びる。
「いいのよ、そんなの!そうそう、この前は連絡くれてありがとうね。まったくヒカリったら、一日寝てれば治る風邪だったのになんであんな急に高い熱「お、お母さん!もうその話はいいから!宗介さん重いの持ってくれてるんだから!」
慌てて母親の話を遮るヒカリ。心の中でほっと一息を吐く。あの時ヒカリが熱を出しちまった原因は俺にもあるわけだし、この話題はかなり気まずい。
「あら!そうだったわね。宗介くん、悪いんだけど、それキッチンの方まで運んでもらえる?もう野菜の下ごしらえは済んでるからすぐにでも始められるからね!」
「あ、いや、俺は・・・」
「宗介くん、こっちこっち」
もうキッチンの方までダンボールを運んだ親父さんが俺を手招きする。
お袋さんも先にキッチンに向かったのを確認してから、隣りのヒカリにこっそりと聞くことにした。
さっきからずっとずっと感じてた疑問を。