第35章 ジンベエザメの試練 番外編
「あはは、別に謝ることじゃないよ。うちはみんな背が低いから羨ましいよ」
「あ、いや・・・」
変に思われたんじゃねえかって不安だったが、ヒカリの父親はすぐに笑い飛ばしてくれた。
・・・ああ、この感じ。やっぱこの人はヒカリの親なんだなって、実感できた。
いつもそうだ。俺がどんなことを言ってもヒカリは笑って・・・
「一緒にご飯が食べられて嬉しいよ。お腹空いてるでしょ?寒いし、早く家の中入ろう」
「はい・・・・・・」
・・・・・・ん?いや待て。今なんて言った?俺の空耳か?
「いやー、育ち盛りの男の子が来るんだからうちにある分じゃ足りないだろうって、買い出しに行って正解だったな。宗介くん、大きいしすごく食べそうだもの。あ、食材持っていくの手伝ってもらってもいいかな?」
「あ、はい・・・」
車のトランクを開けて、何やらでかいダンボールを取り出すヒカリの父親。
・・・いや待て。食材ってなんだ?つーか、さっき『一緒にご飯』って聞こえた気がするんだが・・・
「はい。少し重いから気を付けてね」
「はい・・・・・・っ!」
渡されたダンボールは予想してたよりも重く慌てて力を入れ直す。
・・・いや待て。食い物でこの重さって・・・
「さ、うち入ろうか」
「あ!はい」
だが混乱する俺を余所に、ヒカリの父親はおんなじようにダンボールを持つと、玄関の方へスタスタと歩いていってしまう。頭の中は未だ整理できてないが、俺もそれに従った。
「あ!!やっぱり車の音したからお父さんだった!おかえりなさい!お肉たくさん買えた?」
二人とも両手が塞がった状態じゃ鍵を開けるにしてもインターホン鳴らすにしてもきついんじゃないかと思ったが、玄関のドアが内側から開き、ヒカリがひょっこりと顔を出した。
「ただいま、ヒカリ。ほら、この通りたくさん買えたから大丈夫だよ。そこで宗介くんに会って運ぶの手伝ってもらったんだ」
「へ?宗介さん?」
「・・・おう」
ヒカリのところからは死角になっていて見えなかったんだろう。少し歩を進めて顔を出すと、ヒカリは俺に気付いた。