第35章 ジンベエザメの試練 番外編
「車の中からでごめんね。ヒカリの父です」
「っ、あ・・・や、山崎宗介です」
やっぱりこの人はヒカリの父親だった。
・・・つーか、『山崎宗介です』ってなんだ。俺の名前はもう知ってるわけだし(実際たった今確認されたし)それなのにわざわざ名乗ったりして間が抜けてるっていうか・・・いやでもやっぱり最初だからちゃんと名乗ったほうが・・・ああ、もうわけわかんねえ。こんな風にヒカリの父親が現れると思わなかったから軽くパニックだ。
「少し待っててね。今、車を停めるから」
「あ、はい・・・」
邪魔にならない場所に移動して、ヒカリの父親が車を停めるのを待つ。心臓がバクバクと早鐘を打ち始める。これ・・・一昨日ヒカリを初めて抱いた時よりも緊張してんじゃねえか・・・とそこまで考えて、頭をブンブンと振る。
これから親父さんに会うって時に何変なこと考えてんだよ、俺は。慌てて頭に湧いてきた雑念を振り払おうとする。
「宗介くん、お待たせ。改めて、初めまして。ヒカリの父です」
「は、はい・・・初めまして。や、山崎宗介です。ヒカリさんとお付き合いしています」
・・・ああ、また『山崎宗介です』って言っちまった。俺、間抜けすぎねえか。でももうどうしようもない。
ぺこりと一旦頭を下げて、目の前のヒカリの父親をまじまじと見る。やっぱりヒカリによく似てると思う。背格好含めてだったらお袋さんの方かもしれないが、顔立ちだけだったらヒカリは親父さんによく似ていた。
じっと俺を見上げてくる目とか、本当にそっくりだと思う・・・と同時に見下ろしているのがなんだか申し訳なくなる。普段小さいと思っていた愛や渚よりも小柄なヒカリの父親。身長なんてどうしようもねえことだけど、いたたまれないような気持ちにもなる。
「お母さんとヒカリから聞いてたけど、本当に背が高いんだねえ」
「あ、す、すいません・・・」
たった今自分が考えていたことを言われたからか、思わず謝ってしまう。