第33章 ふたりの、初めて。 おまけ
百とかもそうだけど、こいつらもよくここまで彼女彼女と騒げるもんだと、半ばうんざり、半ば感心する。まあ俺が言ったら完全に嫌味にしか聞こえないだろうから、口には出さないが。
・・・つーか、気分変えるために風呂に来たのにここでまでヒカリの話、すんじゃねえよ。
更に色々聞かれるとやっかいだし、ここは早く風呂の方に行っちまったほうがいいだろう。手早く上半身の衣類を脱ぎ、棚に突っ込む。
・・・すると、今まで賑やかに話していた魚住達の会話がピタリと止まった。
「・・・どうかしたか?」
あまりに急に静かになったから気になり、後ろを振り返る。なぜか、3人が3人とも、真っ赤な顔をして俺を見ていた。
「あ、い、いや・・・」
「は?なんだよ」
「あ、あはは!やっぱすげえっす、山崎せんぱ「ばか!!何言ってんだ!あ、あの、俺らもう行きます!お先っす!」
「お、おう・・・」
事態が理解できてない俺を残したまま、魚住達は逃げるように出て行ってしまった。
「や、やっぱ羨ましい!羨ましすぎる!!」
「俺も来年こそは・・・!!」
「・・・ホント、すげえわ山崎先輩・・・」
出て行く時も口々に何か言っていたが、その意味を理解することはできなかった。
「・・・何だったんだ?あいつら」
疑問は残るが、まあいい。とりあえず早く風呂に入ろう。
「ん?おー、宗介」
「ああ、凛か」
ベルトに手をかけた時、ドアが開いて今度は凛が入ってきた。
「なあ、宗介。なんか魚住達が顔真っ赤にして、しきりに『すげえ、山崎先輩すげえ』って言ってたんだけど・・・お前何かやったのか?」
タイミング的にちょうど魚住達とすれ違ったのだろう。凛が首を傾げながら聞いてきた。
「いや、何もやってねえよ。急にあいつら態度がおかしくなったんだよ」
「はぁ?!急にって・・・あ・・・」
「ん?どうかしたか?」
そんなの俺が聞きたいぐらいだ、と思いながら凛に答える。すると、なぜか凛もまた、俺を・・・というか、俺の背中を見て、ピタリと動きを止めた。そして、さっきのあいつらほどじゃないが、凛の頬も少しだけ赤くなった。