第33章 ふたりの、初めて。 おまけ
その3 『25日 夜』
ハルの家でのクリスマスパーティーが終わって。ヒカリを家まで送った俺は、寮の部屋まで戻ってきていた。
コートを脱ぐと甘ったるい香りが広がり、自然とわかれ際のヒカリのことが思い浮かんだ。
『昨日からずっといっしょだったから離れたくない』そう言った時の真っ赤な顔も、ぎゅっと強く俺に抱きついてきた小さな身体も、何もかもが愛おしくて長いこと俺はヒカリを抱きしめていた。
俺もヒカリと離れたくなかった。ハルんちの前で凛や江に見られて懲りたはずなのに、お互いに『もう一回』『もう一回』と飽きることなく何度もキスを繰り返した。ヒカリの家の前なのに。もう夜も遅くて、凍えるぐらい寒かったのに。それでもヒカリに触れていたかった。
すぐ側を通り過ぎた自転車にベルを鳴らされて我に返らなければ、いつまでそうしていたかわからない。
・・・ダメだ。思い出しただけで顔が緩む。やばい。昨日から頭の中が相当浮かれてる。ずっとずっと欲しかったものが手に入ったんだから無理もないと思うが、それにしたって浮つきすぎだ。
俺よりも先に帰ってきた凛は、愛達のところにでも行っているのか部屋にはいなかった。こんな顔を見られたらまた何を言われるかわかったもんじゃないから、いいタイミングで帰ってきたと思う。
「風呂、入っちまうか・・・」
熱い風呂に入れば、このふわふわ浮ついた頭の中も少しはシャキッとするだろう。着替えやタオルを用意して、俺は風呂場に向かうことにした。
遅めの時間だったから誰もいないと思ったが、脱衣所には魚住と美波、岩清水がいた。ちょうど風呂から上がって、服を着ているところだった。
「あ、山崎先輩、ちっす!」
「「ちーっす!!」」
「おう」
挨拶を返して、魚住達と背中合わせになる場所の棚に持ってきた荷物を置く。そして、服を脱いでいく。
「山崎先輩、今日は遅いっすね」
「ん?・・・まあ、そうだな」
「デートだったんすか?!長島さんと」
「・・・今日は違えよ」
「でも、昨日はしたんすよね?!」
「・・・まあな」
「かぁーーーっ!!羨ましい!!!」
「俺も彼女ほしー!!」
「やっぱすげえな、山崎先輩」