第32章 ふたりの、初めて。 その9
「ハルちゃーん!!飾り付け終わったよー!!」
「こら、渚くん!走っちゃダメですってば!」
『誰でもいいから助けて!』そんな私の願いが通じたのか、バタバタと慌ただしく渚先輩とそれに続いて怜先輩がキッチンに入ってきた。
「あ、ヒカリちゃん!こっちにいたんだぁ!」
「こんにちは、ヒカリさん」
「こ、こんにちは!あ、ありがとうございます・・・うぅぅ・・・」
「え?」
「はい?」
突然お礼を言い出し、脱力する私を見て、渚先輩と怜先輩の顔にはてなマークが浮かんでいた。だけど心底ホッとして口から出てしまったのだから仕方ない。
その後はすぐに真琴先輩達も入ってきて、みんなでお料理を居間の方に運んだりして、さっきの話はあやふやなままに終わった。
・・・・・・本当に・・・本当に助かった・・・!!
「「「「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」」」」
テーブルにはたくさんのごちそう。みんなで他愛もない話をして盛り上がって、みんなで笑って。大切な人達がみんな笑ってて、それがとても嬉しい。
テーブルを挟んで斜め前に座ってる宗介さんも、私とふたりきりの時とはまた少し違った顔で、凛さんや似鳥さんと話してて。そんな宗介さんの表情を見れることもすごく嬉しかった。
「七瀬さんが作ったケーキ、ちょーーうめえっす!!余ってるならもう一個もらってもいいっすか?!」
「あ、百太郎くん。私取ろうか?」
しばらく飲んだり食べたりしていると、百太郎くんが大きな声をあげた。ケーキはちょうど私の目の前。百太郎くんのところからは結構離れてるし、取ってあげたほうがいいかな、と声をかける。
「大丈夫!俺、そっちまで行くから!ありがと、ヒカリちゃん!・・・ケーキ、ケーキ♪」
お皿を手に鼻歌交じりで百太郎くんが私の隣にやってくる。少しだけ身体を傾けて、百太郎くんが入れるスペースを作る。
「ふふ。遙先輩のケーキ、美味しいよね」
「うん!俺、こんな美味いケーキ初め・・・・・・あれ?ヒカリちゃん、なんか首のところ、赤くなってるよ?」
「へ?!!」
思ってもみない百太郎くんの言葉に間の抜けた声が出てしまう。
「ほら、ここ」
「うぇぇ?!・・・・あ、あああ!そ、そうなんだぁ!」