第32章 ふたりの、初めて。 その9
「これ、全部遙先輩が作ったんですか?」
「まあな・・・真琴達も手伝ってくれようとしたけど、かえって邪魔になるから断った」
「あはは・・・」
ケーキを始め、他の料理もどれもすごく美味しそうだった。入部した時に手作りのイワトビちゃんストラップをもらった時はびっくりしたけど、やっぱり遙先輩って手先がすごく器用だと思う。
「あの・・・遙先輩ほど、上手にはできなかったんですけど、これ・・・唐揚げとサンドイッチ、うちで作ってきたので加えてもらってもいいですか?」
さっき宗介さんから受け取った紙袋を遙先輩へと差し出す。多分、遙先輩はお魚系の料理が多いだろうなと思って被らなそうな物を作ってきたけど、予想が当たってよかった。
「これ・・・ヒカリが作ったのか?」
「あ・・・私と・・・そ、宗介さんとで作りました・・・」
宗介さんと一緒に作った、なんて言うの恥ずかしかったけど、唐揚げを揚げたりとか大変なところはほとんどやってもらったから、そのことをきちんと伝えた。少しだけ頬が熱くなるのを感じる。
「・・・そうか、ありがとな。後で宗介にも礼を言わないとな」
「あ・・・は、はい・・・」
私達が付き合ってることはみんな知ってるわけだし、私が変に意識しすぎちゃってるだけなのかもしれない。何事もなかったように遙先輩が受け流してくれて、内心ホッとする。
「あ!こ、これ、盛りつけますね!遙先輩、お皿お借りしてもいいですか?」
だけどやっぱり恥ずかしさは消えなくて、私はそれをごまかすように、テーブルの上に紙袋をのせて、いそいそとその中からタッパーを取り出した。
「ああ、皿ならそこの・・・ヒカリ。お前、どこか痛めてるのか?」
「へ?!」
「いや・・・いつもと動きが違う気がする。腰・・・痛いのか?」
「こ!!こここ・・・そ、そんなことないです!よ!!」
声が思いっきり裏返る。顔が一気に真っ赤になる。いつもと動きが違うって・・・段差もないし、ただ普通に動いてただけなのに、なんでそんなこと遙先輩気付くの?!
「いや・・・かなりつらそうに見える。大丈夫か?」
「だ、だだだ、大丈夫です!」
「本当か?」
遙先輩が心配そうに私の方へと近付いてくる。心配してくれるのは嬉しい。とっても嬉しいけど・・・けど・・・!!!