第32章 ふたりの、初めて。 その9
「・・・ほら。ゆっくり降りろよ」
「は、はい・・・・・・あ、ありがとうございました、宗介さん」
「おう」
石段を上り終わると、宗介さんがしゃがんで私を降ろしてくれた。お礼を言いながら、誰かに見られなくてよかった、なんてホッとすると同時に少しだけ、まだ宗介さんの背中が恋しいな、なんて思う。
「あの・・・毎回宗介さんに迷惑かけるわけにもいかないし、私腰を鍛えようと思います。腹筋とか背筋すればいいんですかね?」
宗介さんにおんぶしてもらいながら考えていたことを言ってみる。いつもいつもこんな風になってたらさすがに宗介さんも大変だし・・・
「ヒカリ・・・それってそういうことになるんだけど・・・お前、わかって言ってんだよな?」
「へ?そういうことって?」
だけど、なぜか宗介さんはちょっといじわるな、なんだか笑い出す前のような顔をしている。
私、何か変なこと言ったのかな・・・・・・
「・・・あ!!!」
「ぶはっ!はははっ!そうか、お前そんなに・・・」
やっと気付いた・・・要約すると、『これから先もたくさんエッチするために、私頑張って腰鍛えまーす☆』って言っちゃったってことだよね?!
「い、いえ!違います違います!そんなにしたいわけじゃなくって・・・」
「はははははっ!」
慌てて否定するけどもう遅い。これってまた宗介さんの笑いが止まらなくなるパターンだ。
「も、もう!・・・あ!で、でも、し、したくないわけでもなく・・・」
「ぶはっ!」
「ちょ、ちょっと!さすがに笑いすぎで・・・ひゃっ!」
・・・ああ、もう何を言ってるんだろう、私。宗介さんがまた盛大に噴き出す。自分で自分が恥ずかしい。でもいくらなんでも宗介さん、笑いすぎ。そんな風に真っ赤になって怒りかけたら、急に身体が宗介さんの方に引き寄せられた。
「ん・・・・・・そうすけ、さん・・・?」
「・・・怒んなよ。ヒカリが・・・・・・あんま可愛いから、つい笑っちまった。悪かった」
宗介さんの胸にぎゅっと抱き寄せられながら、またドキドキが止まらなくなる。
なんだか今の宗介さんはいつもの宗介さんと違うみたい。