第32章 ふたりの、初めて。 その9
・・・やっぱり宗介さんって色んなことよく見てる。気持ちはとっても嬉しいけど、宗介さんに申し訳ないし、誰かに見られたら恥ずかしい。
「私、平気です!荷物だって宗介さんにほとんど持たせちゃってるし・・・」
「はぁ・・・ほんっとお前は変なとこで遠慮するっつーか・・・・・・早くのらねえと、担いで連れてくぞ。花火大会の時みたいに」
「へっ?!!」
宗介さんの言葉に間の抜けた声が出てしまった。あの時は、靴擦れになった私を宗介さんが肩に担いでベンチまで連れてってくれたんだった。
「・・・しょうがねえな」
「ま、待って!の、のります!のりますから!」
痺れを切らしたのか、立ち上がろうとする宗介さんを、私は慌てて止めた。だって、まるで荷物みたいに肩に担がれていくなんてあまりに恥ずかしすぎるし、宗介さんにも負担になってしまうだろう。多分、おんぶしてもらう方が負担にならないはず。
「・・・ほら、早くしろ」
「はい。失礼します・・・」
「・・・よし。立ち上がるから、ちゃんとつかまっとけよ」
「は、はい・・・っっ・・・・・・」
私を背中にのせると、宗介さんはゆっくりと立ち上がった。私はただもう、宗介さんの首にぎゅっとしがみついて、身を任せるしかなかった。
「・・・あの、宗介さん」
「どうした?」
「・・・重くないですか?」
宗介さんにおんぶされて、石段を上っていく。誰かに見られないかなとか、宗介さんの背中やっぱりおっきくてあったかいなとか、宗介さんの髪、今日は私とおんなじシャンプーの香りがするんだな、とか。色んなことが心の中を駆け巡って、パンクしてしまいそうだった。
「重くねえよ。軽いっていつも言ってんだろ。飯・・・は十分すぎるぐらい食ってんだよな、お前。ふはっ!」
「う・・・こ、これから成長期なんです!」
「はっ!・・・そうか」
宗介さんが笑うと、その振動が背中を通して私に全部伝わってくる。たくさん荷物を持って私をおんぶしてるのに、宗介さんの息はまったく乱れない。これまでのトレーニングの成果なんだろうけど、その逞しさにやっぱり男の人なんだなって強く感じて、鼓動が速くなる。昨日だって心臓飛び出ちゃいそうなぐらいドキドキしたけど、今だってそれとおんなじぐらい、ううん、それ以上にドキドキする。
宗介さんといっしょにいると私、いつだってドキドキが止まらない。