第32章 ふたりの、初めて。 その9
「っ・・・・・・あー・・・わかった。でも、ホントにつらかったらすぐ言えよ」
照れくさそうにしながらも、やっぱり私のことを気遣ってくれる。ホント、宗介さん優しいなあ。
「はい!ありがとうございます!」
「・・・おう」
嬉しくて、にっこり笑ってお礼を言ったら、今度は宗介さん、さっきよりも赤くなってそっぽを向いてしまった。こういうところ、すごく可愛いなあ・・・なんて言ったら宗介さん怒るかな?
「あー・・・ヒカリ、腹へったろ?なんか適当に飯作ってやるよ」
「へ?!い、いえ、そういうわけにはいきません!私が何か作ります!」
ぼんやりと幸せに浸っていた私だけれど、宗介さんの言葉に慌ててベッドから立ち上がった。ここは私のうちだし、昨日の夜も宗介さんに作ってもらっちゃったし、それに私だって宗介さんに何か作ってあげたい。
「いい。俺がやる」
「だ、ダメですって!私がやります!」
「・・・俺がやりてえんだよ。頼むからお前は休んでてくれ・・・な?」
言葉は少ないけれど、ぽんと頭に置かれた大きな手と私に向けられる優しい眼差しから、宗介さんの気持ちが全部伝わってくるみたいだった。
「・・・・・・わかりました。じゃあ・・・お願いしてもいいですか?」
「おう」
「あ、でも洗い物は私がやります!その・・・うちの流し低いし、宗介さん昨日すごくやりづらそうに見えたし・・・」
「・・・ああ、わかった」
うちはみんな背が低いから、それに合わせてキッチンも低く作られている。昨日の夜は、宗介さんがお皿を洗って、私がそれを拭いて片付けたけれど、大きい宗介さんは背を屈めてなんだか大変そうだった。そのことを伝えると、宗介さんは笑って頷いてくれた。
「そんじゃ、キッチン貸してもらうな」
「あ、はい!」
「・・・あ、目玉焼き作るつもりだけど・・・ヒカリ、お前卵何個にする?」
宗介さんの質問に少し私は考える。だって普通だったら、目玉焼きの卵の個数なんて聞かれない。私だから聞いてくれてるんだ。こんな食べる女の子、普通の男の子はひいちゃうと思うけど、宗介さんは笑って受け入れてくれる。嬉しいなあ・・・
お腹はぺこぺこだけれど、午後のことを考えたら控えめにした方がいいだろう。