第32章 ふたりの、初めて。 その9
でも、身体はだるくて腰も痛いけれど・・・すごくすごく幸せだった。宗介さん、何回も『ヒカリ』って名前を呼んでくれた。それに・・・たくさん『好き』って言ってくれた。宗介さんに求めてもらえるのがすごく嬉しかった。
だから、私・・・・・・
「・・・お、目ぇ覚めたか?ヒカリ」
そこまで考えていると、部屋のドアが開いて宗介さんが入ってきた。
「あ・・・お、おはようございます・・・」
「ああ、おはよ」
「すいません、私すごい寝坊しちゃって・・・」
「いや、俺も少し前に起きたばっかだから・・・あ、トイレと洗面所使わしてもらったからな」
ベッドに寝たままで挨拶してしまったけれど、宗介さんはもうきちんと着替えも済ませていて、私も慌てて起き上がろうとした。
「は、はい・・・あ、すいません。私も今起きま・・・っ!いった・・・!!」
勢いよく起きようとしたのがいけなかったのかもしれない。さっきよりも強い痛みが腰に走る。
「大丈夫か?ヒカリ」
「あ、え、えっと、はい・・・大丈夫です・・・」
宗介さんが心配するようにすぐに私の側に来てくれる。なんとかベッドの上に起き上がったけれど、じんじんとした痛みが続いていた。
「お前・・・つらいだろ?まだ休んでろ」
「で、でも・・・」
宗介さんの大きな手がそっと私の頭に触れる。
「ハルんち行くの午後からだし、まだ十分時間あるだろ?・・・それともあんまつらいなら行くのやめるか?」
「い、いえ!遙先輩もお料理作ってくれるって言ってたし、みんな待ってるし・・・」
「でもよ・・・」
宗介さんは私を気遣うような視線をずっと向けてくれている。もちろん私だって身体はつらい。そして、こんなことを口に出して言うのはすごく恥ずかしい。だけど、これも私の心からの気持ちだからどうしても宗介さんに伝えておきたかった。
「私・・・昨日、すごく幸せだったから・・・この痛みも全部幸せっていうか・・・だから、私平気なんです」
宗介さんの目を見てそう伝えると、ほんの少しだけ宗介さんの頬が赤くなったのがわかった。