第31章 ふたりの、初めて。 その8
「・・・・・・だ、だって・・・なんか今日は宗介さんと離れたくないんだもん・・・だから甘ったれでもいいです・・・」
微かな、俺にしか聞こえないような声で言うヒカリ。その細い腕がためらいがちに俺の背中に回ってきた。
「・・・そうだな。俺も・・・今日はヒカリと離れたくねえ」
照れくささももちろんある。だけど、今はその照れくささすらも心地いい気がして、素直な自分の気持ちを伝えると、俺はヒカリの小さな身体を更に強く自分の胸に抱き寄せた。
「そ、宗介さん・・・あの・・・お願いがあるんですけど・・・」
「・・・なんだ?」
そのまましばらく俺達は抱き合っていた。お互いの鼓動も呼吸もぬくもりも、何もかもが溶け合っていくみたいで、俺はその心地よさにまぶたが重くなり始めていた。ヒカリが声をかけてこなければ、もう少しで眠っていたかもしれない。
「っ・・・・・・き、キス、して下さい・・・」
さっきよりも小さな声でそう言うと、ヒカリは恥じらうように俺の胸に強く顔を押し当ててきた。ああ、きっとまた真っ赤な顔してるんだろうな、そう思うとまた口元が自然に緩んだ。
「は・・・しょうがねえ奴だな・・・」
「う・・・だ、だって・・・んっ」
身体を少し離してヒカリの頬にそっと手を添えると、予想通りそこから熱が伝わってきた。また少しだけ笑って、ヒカリの唇に自分の唇を重ねた。
「んっ・・・んん・・・・・・ん・・・・・・」
何回か触れるだけのキスを繰り返す。それだけで、さっきまで眠りかけていた身体が熱くなっていくのを感じる。そろそろやめないといけない、そう思ってヒカリから唇を離そうとした時だった。
「っ・・・!」
ヒカリの小さな舌が、俺の唇をつんと突いてきた。
「・・・おい・・・やめろって」
「へ?な、なんでですか?」
「・・・我慢、できなくなる・・・・・・お前、小せえし・・・これ以上したらホントにお前のこと、壊しちまうから・・・」
そう言えばヒカリは慌てふためいて俺から離れると思ってた。
・・・・・・だけど、俺の予想は今度も裏切られることになる。